北の大地とそれから私

流罪になりました。

日記

札幌に帰ってきた。

やらなければいけないことを放って東京に長居していたので、戻った途端にやることずくめである。
帰宅した日からに大学に荷物(酒盛り用)を運び、翌日からは毎日研究室に入り浸る。バイトもフルリモートであることを利用して、研究室で学問と労働をこなしている。家に帰るのは、イカのゲームでインクを垂れ流すときくらいである。こんな調子なら来年には休学の有無を問わず、家を売り払ってもいいかもしれない。わずかながらある家具が手持ち無沙汰になるので、社会の歯車として解き放たれる旧友諸君に押し付けるのも手か。

 

早いもので札幌に越してから4度目の春を迎えた。昨年の積雪量は大層なもので、4月も終わろうとしているにもかかわらず薄汚い雪の丘が所々に見られる。が、確かに春風も感じる。あたたかな風を感じながら見る雪だまりは少し可笑しい。

研究室のある建物には中庭が存在するが、日当たりもよくこちらは既に雪が解け切っていた。誰も来ない空間なのをいいことに今年も喫煙所として通わせていただいている。今日もボケっと中庭にやってくると、昨日までまる裸だった木々が白い花々を纏い始めていた。植物の生長の早さは常々驚かされてきたが、やはり開花前後は特にそれが大きい。寂しい枝々がふと目を離せば華やかな面立ちになる。

 

わぁ!と声を上げて駆け出すほど元気ではないが、それでもおーとは声に出していたと思う。ふと思い返して煙草を取り出す、ライターを擦り、煙を吐く。昨年、私がこの建物に通い出したころには既に葉も落ちていたため、バラ科の何かしらだろうとは考えていたが、結局何だったんだろうなと同定をする。(どどど、童貞ちゃうわ)。

節ごとに1つ花序が付き、葉柄がある。花弁の先端は丸みを帯びているのでおそらくウメだろう。細かいことは分からない。園芸植物は雑種も多く相手をしていてもきりがないのでこんなもんでいいだろう。あまり考え込んでも興ざめだ。

適度に知的好奇心を満たし、離れて暫定ウメの木を見上げる。ここがメインストリートだったら、のんきにニコチン性アセチルコリン受容体を活性化させてやることも、じろじろと植木を見ることも憚られただろうな。誰もいない場所でよかった。咥え煙草などとガラの悪いことしながら、植物を見るなどと文化的な活動をした、可笑しな春の日だった。